妊娠中の潜在性甲状腺機能低下症または低サイロキシン血症に対するレボチロキシン:小児IQへの有益性なし

妊娠中の潜在性甲状腺機能低下症または低サイロキシン血症に対するレボチロキシン治療は、プラセボと比較して5歳児のIQを有意に改善しなかった。
潜在性甲状腺機能低下症試験ではIQ中央値97対94、低サイロキシン血症試験では94対91であり、いずれも有意差なし。
他の神経認知または妊娠転帰に差は認められず、有害事象は両群で低率であった。
これらの所見は、これらの状態に対するルーチンのスクリーニングと治療は正当化されない可能性を示唆している。
研究の概要
デザイン: スクリーニング研究に組み込まれた2つの並行ランダム化二重盲検プラセボ対照試験。
対象: 潜在性甲状腺機能低下症の女性677名、低サイロキシン血症の女性526名、妊娠20週未満の単胎妊娠。
介入: レボチロキシン(甲状腺検査を正常化するよう用量調整)またはプラセボ、疑似調整あり。
主要評価項目: 5歳時(欠損の場合は3歳時)の小児IQスコア、または3歳未満での死亡。
主な結果: IQに有意差なし。潜在性甲状腺機能低下症ではIQ中央値97対94(P=0.71)、低サイロキシン血症では94対91(P=0.30)。
資金提供: ユニス・ケネディ・シュライバー国立小児保健発達研究所および国立神経疾患・脳卒中研究所。
登録: ClinicalTrials.gov NCT00388297。
臨床的背景
潜在性甲状腺疾患は妊娠中に比較的頻度が高く、女性の2~5%に影響する。観察研究では、潜在性甲状腺機能低下症(甲状腺刺激ホルモン上昇・遊離サイロキシン正常)および低サイロキシン血症(甲状腺刺激ホルモン正常・遊離サイロキシン低下)の両方が、小児の神経発達転帰不良(IQ低下を含む)と関連している。しかし、レボチロキシン治療がこれらの転帰を改善できるかどうかは不明であった。国立小児保健発達研究所(NICHD)の母子医学ユニットネットワークが、この疑問に答えるために2つの並行ランダム化試験を実施した。
試験デザイン
試験は米国の15施設で実施された。妊娠20週未満の単胎妊娠の女性をスクリーニングした。潜在性甲状腺機能低下症は、甲状腺刺激ホルモン値≥4.00 mU/Lかつ遊離T4正常(0.86–1.90 ng/dL)と定義した。低サイロキシン血症は、甲状腺刺激ホルモン正常(0.08–3.99 mU/L)かつ遊離T4 <0.86 ng/dLと定義した。適格な参加者は、レボチロキシンまたはプラセボの投与に無作為に割り付けられた。甲状腺機能は毎月モニタリングされ、甲状腺刺激ホルモンまたは遊離T4値を正常化するために用量調整(または疑似調整)が行われた。小児は5年間、毎年発達検査を受けた。
主要評価項目
主要評価項目は、5歳時(5歳時検査が欠損の場合は3歳時)の小児の全検査IQスコア、または3歳未満での死亡とした。潜在性甲状腺機能低下症試験では、レボチロキシン群のIQ中央値は97(95% CI, 94–99)、プラセボ群では94(95% CI, 92–96)であった(P=0.71)。低サイロキシン血症試験では、レボチロキシン群のIQ中央値は94(95% CI, 91–95)、プラセボ群では91(95% CI, 89–93)であった(P=0.30)。その差は統計的に有意でも臨床的に意味のあるものでもなかった。各試験で小児の4%でIQスコアが欠損しており、主に中止または追跡不能によるものであった。
副次評価項目と安全性
言語、記憶、注意、行動スコアを含む、事前指定されたすべての副次的神经認知転帰において、群間に有意差は認められなかった。早産、妊娠高血圧症候群、帝王切開などの妊娠転帰も両群で類似していた。有害事象はまれであり、差はなかった。レボチロキシンによる安全性シグナルは特定されなかった。
母体甲状腺機能
予想通り、レボチロキシンは治療を受けた女性の甲状腺ホルモン値を正常化した。副次解析(Theilenら、2026年)では、同一コホートにおける妊娠中の経時的甲状腺機能を検討し、治療プロトコルが生化学的補正を達成したことを確認したが、それが小児の認知利益にはつながらなかった。
解釈と限界
これらの結果は、本研究で定義された妊娠中の潜在性甲状腺機能低下症または低サイロキシン血症に対するルーチンのスクリーニングと治療が、小児の認知転帰を改善しないことを強く示唆している。試験は検出力が十分で、盲検化され、対照があり、追跡率が高かった。限界として、治療開始が平均16~18週であり、より早期の重要なウィンドウを逃している可能性があること、主要評価項目として単一のIQ測定を使用したこと、一般に健康でヨウ素充足の集団であり、ヨウ素欠乏が蔓延する状況を反映していない可能性があることが挙げられる。この所見は妊娠中の普遍的な甲状腺スクリーニングを支持するものではないが、より重度または早期の甲状腺機能障害を有する女性に対する潜在的な利益を否定するものではない。
資金提供と参考文献
本研究は、ユニス・ケネディ・シュライバー国立小児保健発達研究所および国立神経疾患・脳卒中研究所の助成を受けた。ClinicalTrials.gov登録番号:NCT00388297。
参考文献
Casey BM, Thom EA, Peaceman AM, et al. Treatment of Subclinical Hypothyroidism or Hypothyroxinemia in Pregnancy. N Engl J Med. 2017;376(9):815-825. doi:10.1056/NEJMoa1606205. PMID: 28249134.
Theilen LH, Mele L, Peaceman AM, et al. Thyroid Function Throughout Pregnancy in Women With Subclinical Hypothyroidism or Hypothyroxinemia. Obstet Gynecol. 2026 Jul 27. doi:10.1097/AOG.0000000000006373. PMID: 42492995.