
ハイライト
本パイロット研究では、乳頭パンチ移植と3D乳輪タトゥー(nipple punch grafts combined with 3D areola tattooing, NPAT)を組み合わせた新しい手法を導入し、ジェンダー肯定的両側二切開乳房切除術後の乳頭乳輪複合体(nipple-areola complex, NAC)の再建を行った。NPATは、遊離乳頭乳輪移植(free nipple-areola grafting, FNAG)と比較して、移植片の生着不全や色素脱失(hypopigmentation)などの合併症が少ないことが示された。一般公開評価では、NPATは多様な人口統計学的背景の評価者において、審美評価が有意に優れていた。
研究背景
胸部男性化手術は、出生時に女性と割り当てられたトランスジェンダー男性およびノンバイナリー当事者に対するジェンダー肯定的ケアの中核をなす。術式には、しばしば二切開乳房切除術による乳腺組織の切除と、その後に自然な男性胸郭輪郭を形成するための乳頭乳輪複合体(nipple-areola complex, NAC)の再建が含まれる。従来、NAC再建には遊離乳頭乳輪移植(free nipple-areola grafting, FNAG)が用いられてきたが、完全な乳頭乳輪複合体を採取して新生胸部に移植する方法である。しかし、FNAGには、移植片脱落、色素脱失または色調不一致、乳頭突出の消失、ならびに乳輪周囲の目立つ円形瘢痕など、結果を損ない得るリスクが伴う。これらの有害事象は、患者満足度および心理的ウェルビーイングに影響しうる。
ジェンダー肯定的手術におけるNACは、審美的にも機能的にも重要であるため、合併症を最小限に抑えつつ外観を改善する再建手技の最適化は、未充足の臨床的課題である。
研究デザイン
著者らは、単施設で二切開乳房切除術とNAC再建を受けた18例のトランスジェンダー患者(平均年齢30歳、平均BMI 27)を対象にパイロット研究を実施した。本手技では、乳頭組織を移植する乳頭パンチ移植と、乳輪の色調および質感を再現する三次元(3D)乳輪タトゥーを組み合わせ、この方法をNPATと呼称した。
本研究では、平均100日の追跡期間における患者背景と術後合併症を後ろ向きに検討した。審美的転帰を評価するため、NPATを受けた患者の術後写真を、従来のFNAGを受けた患者の画像と比較した。これらの画像は、Amazon MTurkクラウドソーシング・プラットフォーム上の匿名一般評価者895名により、NACの審美性を評価する7段階Likert尺度を用いて採点された。
主な結果
NPATの安全性プロファイルは良好であり、いずれの患者にも移植片脱落、部分的壊死、肥厚性瘢痕、あるいは伸展性瘢痕は認められなかった。乳頭突出の消失を示した患者は1例のみで、別の1例に移植片の部分的脱色素が認められた。
特に定量評価では、NPATで形成されたNACは、FNAGよりも有意に高い審美スコアを示した(平均評価5.0対4.5、P<.001)。この差は、評価者のジェンダーアイデンティティおよび年齢群にかかわらず一貫しており、再建されたNACの外観が幅広く支持されることを示していた。
これらの結果は、NPATが組織移植の利点と3Dタトゥーの精緻な審美的制御を融合させ、合併症率を上げることなく、乳輪の自然な外観と色調を改善しうることを示唆している。
専門家コメント
NPATアプローチは、従来のFNAGの重要な限界に対処するものである。より大きな遊離移植片ではなく乳頭パンチ移植を用いることで、移植組織の虚血リスクを低減できる可能性がある。さらに3Dタトゥーを加えることで、術後の自然な外観の実現に不可欠な乳輪の色調と質感を精密に再現できる。
本パイロット研究は有望な初期データを示すものの、限界として、症例数の少なさ、比較的短い追跡期間、ならびに検証済みの患者報告アウトカム指標ではなく一般参加型評価に依拠している点が挙げられる。これらの知見を確認し、長期的な持続性と患者満足度を明らかにするためには、標準化された審美・機能評価を備えた、より大規模な前向き研究が必要である。
それでもなお、NPATは、外科的技術と芸術的なタトゥー手法を組み合わせ、ジェンダー肯定的手術成績を高めるために工夫された革新的手法の一例である。
結論
新規の乳頭パンチ移植および3D乳輪タトゥー(nipple punch grafts and 3D areola tattooing, NPAT)手技は、胸部男性化を目的とした手術を受けるトランスジェンダー患者におけるNAC再建に対して、簡便で有効、かつ整容性に優れた選択肢を提供する。合併症を低減し、審美的結果を改善しうることから、NPATはジェンダー肯定的外科医療における有意義な進歩を示す。今後は、より大規模なコホートと長期評価に焦点を当て、この有望なアプローチの妥当性をさらに検証する必要がある。
資金提供および臨床試験
本研究では、外部資金提供および臨床試験データベースへの登録は報告されていない。
参考文献
Amirlak B, Amini T, Kim L, Nadarajan V, Henn D. A Novel Technique for Nipple-Areola Reconstruction in Gender-Affirming Mastectomies With Nipple Punch Grafts and Areola Tattooing (NPAT)-A Pilot Study. Aesthetic Surg J. 2026 Jul 15;46(8):927-932. PMID: 42045395.